2019年2月26日火曜日

父の羽織

約二年前、父が他界した。
86歳。
母が老々介護で、6年ほど認知症が進んでいく父の世話をし、自宅での最後だった。 今はあこがれとなっている自宅で看取られる・・・というヤツ。
幸せな人だなぁ・・・と、改めて思う。

そんな父が、一度も袖を通す機会がなかった羽織があった。
母が「ほれぼれするくらいの絹じゃあ。私がお金を出してあげるから、スカートにでもして、あんた、着てくれん?」

その羽織がこれ。


そこまで言われれば・・・と了解し、東京に持ってきたものの・・・どうしたらいいんだろう。。。
今や、困った時はまずググる。

着物を洋服に作り替えてくれるところを探しまくった。値段とこちらの要求と・・・
やってくれるところはあるが、型紙は店側のデザインのものしかできなかったり(だいたいダサい)、洋裁しかやった経験がなく「自分で着物をほどいてくれ」と言われたり、 以外と東京にはなくて苦労した。
作るからにはちゃんと着られるものを・・・と思い、頑張った。
私はスカートだけを作ると着る機会がない。間違いなく・・・着ない!(笑)
なんとかしてワンピースに仕立てようと!
しかも、長く着られるようにあまり流行に左右されないデザインで!

やっとたどり着いたのが「きもの辻」さん。
洗い張りから仕立てまでやってくれ、こちらの要望も聞いてくださってフィットしたものを作って下さった。

なかでも、裏地。
これは染めているただの裏地だと思っていたのだが、折り込んだ一枚の布地だ!と教えてもらった。
「今はこんな手の込んだことするところはありませんよ。今どきこんなことしたらいくらかかるかわからない。とても贅沢な作り。」
ということだった。

そのワンピースがコレ!!!

友人の顔はプライバシーの問題でハートマークです(笑)

友人のジャズ歌手のコンサートに同級生たちと言った時、やっと写真を撮ることができた。
このワンピースのいきさつを話したら、
「素敵だね」「いい物だって、わかるよね」 と。
お世辞かもしれないが、嬉しかった。
母も「よかったよかった。これでこの羽織ももうひと世代生きて活躍できるがぁ」 と喜んでいた。
アクセサリーも靴もありものだった、ちゃんとこの服に似合うものをあつらえたらもっときれいに見えると思う。
色々チャンスを見つけて着て出かけられたらいいな。


父がいつどこで、どういう経緯でこれを作ったのか、なぜ一度も袖を通さず、しつけすら取ることなく、だけどすごくきれいな形で残していたのか、今や母にもわからないそうだ。

父が結局、袖を通すことがなかった羽織。
そんな劇的な裏話があるわけではないが、一つ形に出来てほっとしている。
できるだけ着よう!
来月、日舞の先輩の舞台がある。今度はそこだな!